写真 繁延あづさ
なぜ新しい基本が
必要なのか
7年ぶりに通信講座をに全面改定し、
新しい基本をスタートする経緯をまとめました。
なぜ、新しい基本が必要なのか?
時代と気候が変わり、食の必要が変わった
元気になる食とは
‖気候風土と季節
‖自分のコンディション
‖その時手に入る食材
この3つを考慮したものです。
気候風土が変われば、当然、最適解は変わります。2010年代に入り、時代と気候が変わり、食事の必要は大きく変わりました。
菜食で多くの方が元気になっていた2000年代と異なり、今は完全菜食ではなく、適切な動物性が必要な時代になったと私たちは確かに感じています。
もともとマクロビオティックは完全菜食ではない
本来、マクロビオティックは完全菜食を原則としているわけではありません。もともと私たちも「まずは、菜食で土台をつくり、必要を感じたら、動物性を白身魚からとってください。特に男性、成長期、高齢者は必要です」とアナウンスはしておりました。
しかし、時代が変わった今、、もっと体系的に、意図的に動物性の必要が高まっています。そして安易に「菜食+動物性を適当に」でも健康は難しいと感じています。
菜食中心から動物性を取り入れる時代へ
もちろん、私のこれまでの理解・理論や「はじめるコース」が間違っていた可能性もあります。しかし、どうしても、かつて菜食中心の食生活で何百何千という生徒さんが、健康になり美しくなられた事実は消しがたいのです。私自身も、振り返って菜食で元気になった事実は消すことはできません。
今、その是非を結論づけるのは避け、真実を判断するのに成熟する時間の経過を待ちたく存じます。
必要の変化を認識した2015年
一方で、「今の必要」は現実に日々私達に判断を迫っています。もっと早くに気づくべきでしたが、必要の変化をはっきりと認識したのは、2015年でした。
マクロビオティックに出会う前のような、体温の低下、肌質の低下、眠さやだるさ他体力の低下を認めるようになりました。ところが、自分達だけでなく、農作物の変化、生徒さんのご体調に同様の変化を数多く認識しました。
一方で、温暖化から寒冷化の気象変動は、事実として、多くの科学者が提示しています。 そこで、一度創りあげた理論を壊し、前提を注意深く疑い、新しい模索が始まりました。研究に2年は丸ごとかかってしまいました。混乱もありましたが、しかし、わくわくする体験でもありました。命とは変化そのもので、真実とは固定化されないものなのです。
新しい「基本」を
変らぬ軸と、軸があるからこそ変っていくものを見定めるものも、エキサイティングで、私は再び、人と食材という命と自然界に台所に幾度も感動しました。
そして今、その概要をまず整理できたと思います。加えて、「はじめるコース」制作時から9年のときを経て、私自身の研究者・料理家としての成長もあり、この度、大きく、今回内容を一新いたします。
近年の大きな気候変動
「必要が変化した」といっても、法則が変わったわけではありません。
例えるなら、夏には薄着を、冬には厚着が必要なものなのです。陽性すぎるものは、陰性さで中和し、陰性すぎるものは陽性さで中和することも、調理法の陰陽も何も変わりません。
しかし、「状況」が変わりました。
まるで、真夏から、真冬に地球全体が移ったかのように、この2年で、激しい寒冷化と太陽活動の低下を見せています。 日本ではあまり報道されませんが、ヨーロッパや米国、中国では、マイナス30度を記録したり、中近東に雪が降り積もったりしています。日本でも、台風が北海道に上陸したり、火山活動や地震活動の活発化、ゲリラ豪雨、異常な日照りと日照不足は、皆さんもいくつか記憶しておられるのではないでしょうか。
それに伴い、作物たちも、大幅に変わりました。10年前と同じように調理しても、同じような力強さや味にならないのです。
時代の変化を愉しもう
同時に人間社会も大きく変わり、生産現場の高齢化、移動費その他の高騰、異常気象などで、食物生産の負担と経費は跳ね上がりました。ゆえに、同じメーカーの同じラベルの食材でも、内容は大きく異なっています。
また、気象条件ではありませんが、世の中の価値観、文化・文明の進歩もまた、必要を変えるだろうと思います。
台所は常に、価値観を創る哲学の場であり、時代と生きています。言うなれば、より「主体性」「自覚的自分軸」が問われる時代になっていると思います。
以上のことを、様々な形で発信してきましたが、融合して理解し、実際に台所にどう反映させたらよいのか、もっと具体的に知りたい、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのために、マクロビオティックはじめるコースを全面改定し、「台所の学校 基本のコース」を創った次第です。そして、そのことに、とてもワクワクしています。
自分なりに、うまく今の時代に調和できている、という方は、「台所の学校 応用コース」をおすすめします。
陰陽五行説に合わせて、より自分の体質や季節に合わせた料理がつくれるようになりましょう。人体をもっと理解しましょう。基本部分についても、「はじめるコース」にはなかった、包丁の持ち方などは折り込み、復習をかねて、変化も一通りご説明します。動物性も勿論、取り入れます。
「はじめるコース」と新しい「基本コース」の違い
1.講座で推奨する食材が変わりました
「はじめるコース」では、〈質〉を意識した前提で、〈種類〉も特定することが多く、菜食に限ったバランスと、トマトやじゃがいも他陰の強い食材は用いない内容でした。また、自然食品店の食材が、それほど高価でない時代でした。
新しい「基本コース」「応用コース」では、〈種類〉は幅広く〈質〉を重視します。 より身土不二にのっとり、その土地で手に入る種類で代用可能なレシピやメニューを多く提供します。
例えば味噌も、麦味噌といった種類の特定より、米味噌でも麦味噌でもかまいませんので、材料と製法により、陰性すぎないか、など実際を重視します。豆味噌のように、麹が穀物でなく豆であるものは、全く別のものとして、説明します。 また、動物性食材を用いるため、それに合う陰性さが強い植物性素材(トマト他)も用います 新しい日照不足&乾燥&寒冷化の気象に対応するため、オリーブオイルなども、伝統製法に則り、手に入れば利用いたします。 推奨するのは下記であり、変化することもある特定のメーカー名より判断基準をご紹介します。
料理された食材たちは、彼らのこの世での最後の姿です。料理は供養でもあると思います。簡素でも、適切に美しく、感動していただきたいと考えます。
2.マクロビビオティックという言葉
新しいコースではあえて「マクロビオティック」という言葉を使わず「台所の学校 基本コース」という名称にしました。私達の思う「マクロビオティック」と世間との違いが大きくなりすぎたため、あえて使わずに行ないます。
3.今の気候に合わせ下記を変えました
気候・気象の変化により「過剰・血液粘度が高まりやすく、陽性過剰になりやすかった2000年代向け」から「不足・血液粘度が薄まりやすく、陰性過剰になりやすい2010年代向け」に内容を作って行きます。両者を比較することで、判断がより適切になり、今後に長く役立つことでしょう。
たとえば、
- 玄米の炊き方、新しい標準食、味の濃さ、食材の幅(バルサミコ酢、いりこ、かつおぶし、トマト他)
- 今の気象と食材に合わせた陰陽論
- 切り方、包丁の持ち方を論理的に説明
- メニューは、クリアーメニュー(水溶性メニュー中心)から、それを踏まえて、現代の気象に合ったストロングなメニュー。家庭で短時間で実践しやすく、治病目的というより、日常食として取り入れやすいメニューを増やす
- 卵、魚料理を取り入れる(肉は上級のいずれかで予定、乳製品未定)
- より暦を意識し、無理なく台所計画を立てる
変わらないこと
1.台所は全ての土台
変らず「台所とは、世界と人生の縮図であり、動植物のこの世での命の最後の場であり、社会とつながる場でありながら、家庭の基盤である。料理とは、彼らがわたしたちに生まれ変わる神聖な行為であり、台所料理から人生が創られる」と信じています。
同時に「日々の喜び」「たのしみ」であり、「家族や友人達との食卓」こそ幸せの土台であり、また、食べものは血液になり心身に変ることから、全ての土台、健康の基盤だとも変らず思います。
2.食べ物は命
できるだけ環境負荷をなくしたい、文化に先導される文明でありたい(現代日本は逆に見えます)、生き物の命の尊厳を尊重したい、という思いはなくなりません。以前はそれを「マクロビオティック」という言葉にこめていました。 また、栄養学・科学も勿論重要なのですが、機械論で、全てをとらえるのではなく、命と捉え、それを具体化する為に、陰陽五行論や東洋の視点をベースとしながら、科学を鑑みることも変りません。 必要な食は、気候・季節環境、風土、食材自体の個性、その人の年齢や体質によって異なることも、調理法も重要なことも変りません。
以上です。
最後に
オーガニックベースは、開業して15年を迎えることができました。変化の多い現代で、奇跡のようなことにすら思います。皆様のおかげです。ありがとうございます。いま私たちの原点であり核である台所料理の哲学と技術に向き合っていきたいと思います。
この講座は私たちにとって、皆様と共に歩んだ15年の総決算であり、同時に新たに踏み出す第一歩です。
皆様にとってこの新しい講座が、愉しい学びの場となることを心から願っております。
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